役員だけだった会社が初めて従業員を雇うときに必要なこと

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「これまでは自分と役員だけでやってきたけれど、そろそろ従業員を1人雇いたい」

会社が成長してくると、こんなタイミングがやってきます。

初めての採用はうれしい一方で、

「雇用契約書を作ればいいの?」
「労災や雇用保険はどうする?」
「社会保険はすでに会社で入っているけど、何か手続きが必要?」
「給与計算も今までと同じで大丈夫?」

など、急にやることが増えます。

特に注意したいのは、役員だけの会社と、従業員を雇っている会社では、必要な労務管理がかなり違うということです。

今回は、役員だけだった会社が初めて従業員を雇うときに、まず確認しておきたいことを順番に整理します。

※この記事は2026年9月現在の制度をもとにしています。

1.まずは雇用条件をきちんと決める

採用が決まったら、最初に整理したいのが「どんな条件で働いてもらうのか」です。

たとえば、

  • 雇用期間
  • 仕事内容
  • 勤務場所
  • 始業・終業時刻
  • 休憩時間
  • 休日
  • 給与
  • 給与の締日・支払日
  • 残業の有無
  • 退職に関すること

などです。

「月給30万円で、平日の9時から18時くらい」と口頭で決めるだけでは十分ではありません。

労働契約を結ぶ際には、賃金や労働時間など一定の労働条件を明示する必要があり、そのうち法律で定められた事項については原則として書面での明示が必要です。本人が希望した場合には、一定の方法によるメール等での明示も認められています。

また、現在は「雇入れ直後の勤務場所・仕事内容」だけでなく、将来変更する可能性がある範囲についても明示が必要です。有期契約の場合には、契約更新の基準などについても確認が必要です。

初めて雇用するときは、採用を急ぐあまり条件が曖昧になりがちです。

後から「聞いていた話と違う」とならないよう、働き始める前に条件を具体的に整理しておくことをおすすめします。

2.初めて従業員を雇うと、労働保険の手続きが発生する

ここは、役員だけだった会社が特に見落としやすいところです。

労働保険とは、労災保険と雇用保険をまとめた呼び方です。

原則として、労働者を1人でも雇うと労災保険の対象になります。また、雇用保険についても、原則として「週の所定労働時間が20時間以上」「31日以上引き続き雇用されることが見込まれる」などの要件を満たす従業員は加入対象になります。

一般的な会社(一元適用事業)で初めて対象となる従業員を雇った場合、主に次のような手続きが出てきます。

労働基準監督署等への手続き

「労働保険 保険関係成立届」を、原則として保険関係が成立した日の翌日から10日以内に提出します。

さらに、「概算保険料申告書」を原則として保険関係成立日の翌日から50日以内に提出し、労働保険料を申告・納付します。

ハローワークへの手続き

雇用保険の対象者を初めて雇った場合は、「雇用保険適用事業所設置届」などの提出が必要です。

従業員本人については「雇用保険被保険者資格取得届」を、被保険者となった日の属する月の翌月10日までに提出します。

……と、ここまで読んで、

「保険関係成立届? 概算保険料申告書? 今度は雇用保険の設置届? なんだか急に難しくなってきた」

と思われたかもしれません。
初めて従業員を雇う会社にとっては、聞き慣れない書類ばかりなので、混乱してしまうのも無理はありません。

ここでは、書類の名前を全部覚えなくても大丈夫です!

まずは、「役員だけだった会社が初めて従業員を雇うと、労働保険関係の新しい手続きがいくつか必要になる」ということを押さえておけば十分です。

「概算保険料って、何を概算するの?」「どこに何を出せばいいの?」という具体的な手続きについては、別の記事であらためてわかりやすく解説します。

なお、建設業などでは手続きの流れが異なる場合がありますので、業種にも注意が必要です。

3.健康保険・厚生年金は「会社が加入済みでも」従業員の手続きが必要

新しく雇った従業員が加入要件を満たす場合、その人の「被保険者資格取得届」を提出します。

提出期限は、原則として事実発生から5日以内です。

「試用期間だから社会保険はまだ入れなくていい」と考えてしまうケースがありますが、試用期間中でも加入要件を満たしていれば、原則として入社時から加入対象です。

パート・アルバイトの場合は、所定労働時間や所定労働日数、会社の規模などによって加入の判断が変わることがあります。

初めての採用では、採用を決める段階で「この働き方なら社会保険・雇用保険はどうなるか」まで確認しておくと安心です。

4.勤怠管理と給与計算の仕組みも必要になる

役員だけの会社では、これまで「何時に出社して何時に帰ったか」を細かく管理していなかったかもしれません。

しかし、従業員を雇うとそうはいきません。

使用者には、従業員の始業・終業時刻を確認し、記録することが求められています。原則的な方法として、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間などの客観的な記録を基礎に確認する方法などが示されています。

1人目だからといって、

「だいたい9時から18時」
「残業した日は本人に言ってもらう」

という管理にしてしまうと、人数が増えたときに困ります。

最初の1人の段階から、
勤怠をどう記録するか、残業をどう申請・承認するか、給与をどう計算するか、欠勤・遅刻・早退をどう扱うか、
といった基本ルールを決めておくと、その後の採用もかなり楽になります。

5.残業してもらう可能性があるなら36協定も確認

「忙しい日には少し残ってもらうかもしれない」

そんな会社は、36協定も忘れず確認しておきましょう。

法律で定められた労働時間を超えて時間外労働をさせたり、法定休日に働かせたりする場合には、原則として労使で36協定を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。

従業員がまだ1人だから関係ない、というものではありません。

初めての採用では、入社手続きに目が向きがちですが、実際に働き始めた後の労働時間のルールまで準備しておくことが大切です。

6.就業規則は1人目から必要?

「従業員を雇ったら、就業規則も作らなければいけないの?」

これもよくある質問です。

法律上、就業規則の作成・届出義務が生じるのは、原則として常時10人以上の労働者を使用する事業場です。

そのため、従業員1人の会社が直ちに就業規則を労働基準監督署へ届け出なければならないわけではありません。

ただ、届出義務がないことと、社内ルールが必要ないことは別です。

有給休暇、遅刻・欠勤、残業、休職、服務上のルールなどは、人数が増えてから急に決めようとすると、すでにいる従業員との関係で難しくなることがあります。

これから継続的に採用する予定があるなら、早めに会社のルールを整理しておく意味はあります。

初めての雇用は「手続き」だけでなく「会社のルールづくり」のスタート

初めて従業員を雇うときは、社会保険や雇用保険の届出だけ済ませれば終わり、というわけではありません。

労働条件を決める。
勤怠を管理する。
給与を正しく計算する。
残業や休日のルールを決める。
必要な保険手続きをする。

つまり、「人を雇う会社」としての仕組みを作り始めるタイミングでもあります。

特に1人目の従業員は、社長との距離が近いぶん「細かいルールはその都度話せばいい」となりやすいものです。

それでも、最初に基本的な仕組みを整えておくと、2人目、3人目を採用するときの負担がずっと小さくなります。


ここまで読んでくださってありがとうございます!
もしかしたら、「思っていたより、やることが多いな・・・面倒だな・・・」と感じた方もいるかもしれません。

最初からすべての制度や書類の名前を理解する必要はありません。
まずは「誰を、いつから、どんな条件で雇うのか」がわかれば、必要なことを一つずつ整理していけます。

「初めて従業員を採用するけれど、何から準備すればいいかわからない」という場合は、入社手続きだけでなく、雇用契約、労働時間、給与計算、今後の社内ルールまで一緒に整理することができます。

オフィスつなぐでは、小さな会社だからこそ無理なく続けられる労務管理を、一緒に考えていきます。

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